写真ブームの光と影


なんか世代交代じゃないんだろうけど、ネットの写真サイトも変ってしまったな。10年一昔って言うが、10年でネットの世界は大きく変った。やっとISDNが繋がったと騒いでいた頃だから、私としてもフィルムスキャナーで取り込んだ画像をいかにして小じんまりとしたサイズに収めつつ、かつクオリティを落とさないかを考えてネット用の画像を作っていたものだ。
でも、2000年あたりからデジタル一眼が普及し始め、それに合わせるように光ケーブルで回線スピードのストレスが一気に軽減したり、ハードディスクの容量も飛躍的に増えたものだから、最近写真のサイトを立ち上げた人たちは、20世紀に私たちがしていたような苦労は知らないわけだ。

それと、私が最近淋しく感じていることがある。
私のブラウザーのブックマークの「Photo」のフォルダーには多くの写真のサイトが登録されていて、他人の写真に興味の無い私でさえ、10余年の間に100以上を数える。それらは、私がいいサイトだなって思ったところばかりであったが、その半数近くが今は繋がらないのである。容量不足でどこかに引っ越しているのかもしれないが、完全に閉鎖されているところも少なくない。皆どうしているんだろう?って思うわけだ。
そんな私も、長期に渡ってポートレートの新作をアップしていないから人のことは言えないのだが、近況だけはせっせと伝えてきたつもりである。
そんな中で、愛知の神谷則明氏は今でも精力的に活動されているようで、嬉しくなってしまうのである。
過去に何度か情報交換をしたことはあるが、それもネット上のことで、実際に一緒に撮影をするどころか、顔を合わせたことさえないのに、なんとなく親近感を感じていた神谷氏である。ここに行けばちゃんとした写真が見れるんじゃないかと思えるし、実際にそうであるからいつもホッとするのである。

デジタル一眼がかなり一般的に広まって久しいが、そうなることで写真を一眼レフで撮ることの敷居が低くなったようだ。そりゃ、一番厄介だった露出のミスが事前に防げるし、なんと言ってもランニングコストが安いのだから、どんどんシャッターが切れることは上達の一番の近道ともなる。
それに、簡単にブログが開設できて写真が載せられるのだから、気合も入るし他人の作品もいっぱい見れることになる。銀塩が主流の時代は、ネットで写真を公開している人はほんの一握りのカメラマンだけであった。それとデジタルカメラで写真を公開している人はほとんどがコンデジでの写真であったから、今のように作品をみんなに見てもらうって感覚ではなかったわけだ。ブログなんて言葉もなくて気軽な絵日記のようなものだったと言えるのかな。

これだけ多くの人が一眼レフで写真を本格的に撮りだすと、分母が大きくなるわけだから、いい写真の数が増えて当然である。しかし、単純な数字だけの世界ではなくて、これだけ才能ある人たちが世の中には埋もれていたんだなって思うのである。そんなに写暦が長そうに思えないのに、いい写真を撮っている人がかなりいることに、時々脅威を感じるのである。カメラや撮影の知識ではなく、センスのいい人は最初からどこか違うのだ。
もちろん、分母が爆発的に大きくなったことで、見るに耐えない写真がそれ以上に増えていることになるので、質のいい写真を見つけるのは大変なのである。

犬の散歩で、大きな公園に良く行くのだが、望遠レンズをつけたデジカメを持った人に何度も出会うのだ。野鳥を撮りに来ているようだが、10年前では考えられなかったことである。
梅や桜の季節になれば、その数は倍に増えるし、紅葉の時期もカメラマンで溢れることであろう。
しかし、ポートレートをモデルを連れて個人で撮っている人の数は、果たして増えているのだろうか?どうもそれだけはあまり変っていないように思えるのである。
これだけ、巷にカメラマンが増えているのに、ほとんどが風景写真やスナップに流れて行っているように感じる。
まだまだ、ポートレートは万人が認めるジャンルとは言い難いわけだ。

女性の写真といえば、最近は猥褻な写真が氾濫している世の中であるから、以前よりさらにレベルが低く受け止められているように感じるのである。特に、デジタルになると現像のために写真屋さんに持っていかなくてもいいわけだ。昔ならポラロイドで撮るしかなかったものが、デジタルなら撮り放題だから、世の中に溢れるのは当然のことである。
雑誌に出てる撮影会だって、AV女優のアルバイトがやたら目に付くし、ネット上でモデル希望の書き込みをしている素人女性も簡単にヌードを撮らせてギャラはいくらだとかが多すぎてうんざりしてしまうのである。それって完全に風俗嬢になっていることに気がついているのだろうか。また、そういうビジネスが成り立っているのだから、需要があるんだろうな。でも、危ない目に遭ったり、写真を勝手に使われたりと、割りに合わないリスクが高すぎるのを覚悟の上なのか馬鹿なのか。
私は、実際に痛い目に遭ったモデルも知っていれば、その逆にカメラマンも知っている。それだけに、今の風潮はかなりまずいと感じているのだ。
私のような、安全極まりないカメラマンにだって、最近の物騒な事件の数々が「警戒」の二文字となって影響を及ぼす世の中になってきそうだ。逆に、カメラマンは金づるとしか考えていないような、恐ろしいモデルに引っ掛かることの無いように、注意していただきたい。美人局的な被害を受けたという例も伝え聞く世の中になっているのだから、モデル選びは慎重にしたいものである。


<−戻る